特定目的事業体という便利な組織

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2001年12月に破綻したアメリカの巨大企業エンロン(Enron Creditors Recovery Corp)

総合エネルギーとITビジネスを取り扱ってた企業でしたが、破綻したきっかけの1つに、不正な会計処理がありました。

会計処理に関して登場するのが、特別目的事業体SPE(Special Purpose Entity)です。

リスク分離のために活用されるSPE

SPEは、ヨーロッパなどでは、 SPV(Special Purpose Vehicle)と呼ばれ、信託型・組合型などがあり、法人格を有する場合は、特別目的会社SPC(Special Purpose Company)になります。

SPEは、一般的に、原保有者から資産の譲渡を受け、株式や債券を発行するなど、特別な目的のため設立される組織です。

エンロン事件の際は・・・SPEを、連結決算対象外の子会社という位置づけにし、特別の目的=取引損失隠しに利用していました。

組成されたSPEの数は、3,000以上になっており、ケイマン諸島などオフショア地域でも組成されていました。

ポルトガル銀行BESとSPV

2014年8月に公的救済に追い込まれたポルトガルの大手銀行バンコ・エスピリト・サントBES(Banco Espirito Santo)。

チャネル諸島のジャージーなどにSPVを複数設立し、系列会社が発行した多額の債券をSPVで引き受けていました。

SPVは、債券をとりまとめ、商品化し、顧客に販売することで、グループ全体の資金調達組織として機能していました。

証券の発行を代行していた大手金融機関クレディ・スイスによると、1つのSPVでは、2012年1月と2014年2月に発行した株式で、2億250万ユーロ(約270億円)の純利益を上げていたとされています。

SPV、SPE、SPCは、活用方法から、連結決算対象外になる基準の厳格化など法律・制度の整備が進められています。

それでも、2011年時点で、SPEへの資金流入量は、ハンガリー、ルクセンブルク、オランダ3カ国だけの数字だけで、6,000億ドルに上っており、非居住ビジネス法人OFC(offshore financial centre)への資金流入量の約7倍になると国際連合貿易開発会議(UNCTAD)により数字が発表されています。

SPV、SPE、SPCに関連する事業体として、VIE(Variable Interest Entity)があり、Citiなど大手金融機関や、中国企業が活用しています。

VIE=変動持分事業体と呼ばれるもので、GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)アメリカの会計基準に則した事業体です。

サブルライム関連の損失を隠す目的に利用

金融機関大手のCitiは、債務担保証券CDO(Collateralized Debt Obligation)をVIEに金額未公表の形で置いています。

CDOは、信用力が低い個人向けの住宅ローンを裏付けとして組成されていたものですが、その中には、デフォルトになったものもあり、評価損、損失などが、発生している可能性があります。

けれども、VIEに置くことで、簿外の関連会社扱いになるため、ここに不良債権などを置くことで、決算書に数字が現れません。

実は、VIEは、2011年4月時点で、アメリカで上場している中国企業の42%が活用しています。

負債を隠蔽する目的ではなく、中国国内での外資規制をかわす目的で、1990年代に考案された構造です。

中国企業のVIEの一般的な構造

簡単な組織図の一例としては、

b)オフショア法人(親会社)
 ↓
c)香港法人(節税目的)
 ↓
d)中国外商独資会社=e)契約=a)中国内資会社(VIE)

*外商独資企業WFOE(Wholly Foreign-Owned Enterprise)は、外国人投資家で完全に所有されている企業。


a)
中国人に株主になってもらい、外資規制の事業を経営できる中国内資会社(VIE)を設立する。

b)
親会社を、オフショア地域(ケイマン諸島など)に設立する。

c)
香港に100%出資の子会社を設立する。

d)
香港子会社により、中国国内に外商独資会社を設立する。

e)
外商独資会社と中国内資会社(VIE)の間で経営や株式に関する契約を締結する。

f)
オフショア地域の親会社は、中国内資会社の実質的な支配権を得ることができる。

これまでは、中国企業の多くが、海外上場を実現するために、有効な手段として活用されてきました。

中国で規制について法整備が進むVIE

VIEが問題となったのは、アリババの関連会社である決済会社アリペイでの事件でした。

アリペイ事件とは、アリババの創業者であるジャック・マー氏が、決済子会社であるアリペイ(支付宝)を自身が保有する中国企業に譲渡しましたが、アリババの大株主である米ヤフーや、日本ソフトバンクが、その事実を知らされなかったというものです。

決済会社は、100%中国内資の必要があり、中央銀行がアリペイの支配権をアリババグループに認めなかったため、構造上、譲渡を迫られたようです。

アリババは、VIEを活用する形で、中国国内の外資規制を回避し、アメリカで上場を果たしています。

これまで規制していませんでしたが、2015年に入り、中国商務省により改正提案があり、外国人投資家が制限・禁止されている産業・部門では、中国国籍者による支配された企業しか認めない方針で、VIE構造は維持するのが難しくなる可能性があります。

その一方で、外国人による投資規制産業・部門の緩和も提案されていますが、今後、VIEを活用している中国企業は、企業構造の再編を迫られるかもしれません。

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