クレジットカードなどには、様々なブランドがありますが、
カードのブランドとは、そもそも何なのか?
というと、国際的に決済サービスを提供する「主体」を指します。
カードブランドには、主に2つあり、
1つ目は、
・決済ネットワークの運営・管理
・ブランド規約の作成・調整
・ブランドロゴの管理
などブランド業務を行うブランド。
2つ目が、上記に加えて、
・クレジットカードの発行
・加盟店の獲得
などカード業務を行うブランドです。
VISA、Master、銀レイは、ブランド業務に特化したブランドで、
アメリカンエクスプレス、JCB、ダイナースクラブなどは、ブランド業務とカード業務両方を行っているブランドです。
適用される為替レートの基準
国際ブランドによって、
TTSを基準としている場合
TTM+手数料を基準としている場合
があります。
TTSは、
Telegraphic Transfer Selling Rateの略で、
銀行が顧客に対して通貨を販売する際のレートで、
顧客が円貨を外貨に換える場合に適用されるレート
TTBは、
Telegraphic Transfer Buying Rateの略で、
銀行が顧客から通貨を購入する際のレートで、
顧客が外貨を円貨に換える場合に適用されるレート
TTMは、
Telegraphic Transfer Middle Rateの略で、
(TTS+TTB)/2 で算出された数字
各ブランドの為替レートは、1日に1回決められます。
TTSを基準としているブランドでは、加盟店への支払いにTTBを採用することで、差分を収益としています。
カード発行主体は、顧客に対して、一定の手数料を課すことで、収益を得ています。
この一定の手数料は、マークアップフィー(Mark Up Fee)と呼ばれています。
為替レートは、米ドルが基準となっており、米ドル以外の通貨の場合には、一度米ドルに換算することになります。
たとえば香港で買い物をした場合には、
香港ドル→米ドル→日本円
という形での換算となります。
為替レートが適用される基準日は、買い物など利用した日とは限らず、ブランドに売上確定情報が渡った日となります。
買い物をしたタイミングで為替レートを確認し、金額を確認するためには、Dynamic Currency Conversion(DCC)を利用する必要があります。
決済する時点でのリアルタイムレートで自動価格表示とカード発行国通貨決済が可能となるのです。
Paypalを利用時に請求金額を確定させる方法
Paypalを利用して決済する際、提供されているサービスが外貨表示だと、通貨換算オプションを選択することができます。
・Paypalの通貨換算プロセス
・MastarCardおよびVisaの通貨換算プロセス
どちらを選ぶかというものです。
Paypalの通貨換算プロセスは、
・元の取引通貨
・実際に請求される通貨換算後の金額
両方が確認用に表示され、取引には自分のカードの通貨で取引することになります。
Paypalの通貨換算プロセス利用した場合は、MasterCardもしくはVisaへ異議を出すことはできません。
ちなみに、以前Paypal決済を利用した際、
・Paypalの通貨換算プロセスを選択して表示された金額は、76,286円
・MastarCardの通貨換算プロセスでカード明細に掲載された金額は、73,880円
約2,406円の違いがありました。
決済時に課金される金額が、完全に把握出来るので安心感がありますが、レートに大きな開きがあるケースがあるので、注意が必要となります。
マレーシア・リンギット両替サービスと為替レート
2015年11月下旬に、10,000円をマレーシア・リンギットに両替すると、
銀行:302RM
海外両替ユーロドル:341RM
ジョホールバル両替所:339RM
という結果になりました。
「海外両替ユーロドル」というのは、宅配で外貨を送ってくれるサービス提供会社です。
銀行と海外両替ユーロドルとのレート差は、39RM=約1,100円で、11%も違うことになります。
一見金額が大きく感じますが、日本国内で宅配を依頼すると、振り込み手数料、郵送料が発生するので、1万円程度だと、あまり大きな差はありません。
現地について、すぐに動きたい!と考えていて、まとまった金額の両替予定がある場合は、事前に日本国内の宅配サービスを利用して、外貨に両替をしておくのが良いかもしれません。
ちなみに、海外の両替所の表記だと、
銀行:33.01
海外両替ユーロドル:29.32
ジョホールバル両替所:29.49
となっていたりもするので、
「む??あまりレートがよくわからないな・・・」
とならないように、iPhoneなどに、為替レートを確認できるアプリを入れておき、自分の希望するレートを確認する必要があります。
カードブランドの為替レート
クレジットカードの為替レートは、どのようになっているかというと・・・
各カードブランドのサイトで、最新のレートが明記されています。
日付を指定して確認できるのが、MasterとVISAで、2015年11月30日の基準レートは、
Masterは、28.761570円
VISAは、29.151939円
JCBは、当日の基準レートのみ記載されています。
2016年1月26日時点での為替は、
Masterの基準レート
MYR(マレーシアリンギット)=27.459912円
SGD(シンガポールドル)=82.542787円
HKD(香港ドル)=15.174203円
CNY(中国元)=17.960176円
USD(米ドル)=118.160000
EUR(欧州ユーロ):127.695536円
GBP(イギリスポンド)=168.767934円
JCBの基準レート
MYR(マレーシアリンギット)=27.60円
SGD(シンガポールドル)=82.60円
HKD(香港ドル)=15.16円
CNY(中国元)=18.05円
USD(米ドル)=118.19
EUR(欧州ユーロ):128.28円
GBP(イギリスポンド)=168.05円
VISAの基準レート
MYR(マレーシアリンギット)=27.735936円
SGD(シンガポールドル)=83.380952円
HKD(香港ドル)=15.264055円
CNY(中国元)=18.071920円
USD(米ドル)=118.888111円
EUR(欧州ユーロ):128.547518円
GBP(イギリスポンド)=170.089308円
通貨により異なりますが、
Master>JCB>VISA
という順でレートが良いということになりました。
事務処理費用については、別途かかる可能性があるので、この通りの結果になるとは限りません。
また、カードを利用した日に、サイトのレートを確認していても、実際の請求金額が異なる可能性があります。理由は、換算日が、カード会社の決済センターに到着した日付となり、カードを利用した日付とは異なるためです。
利用店舗によって異なりますが、利用日から2から4日後が目安となっています。
レートを見てみると、無理に空港などの銀行で、現地通貨に両替するよりは、カード決済のほうが有利になる可能性が高いということになります。
アメリカで本格的に普及するEMV
アメリカでは、2015年10月から本格的にEMVの普及に取りかかっています。
EMVとは、
・EuroPay
・Matercard International
・Visa International
の間で合意したICカードの統一規格で、3社の頭文字を取って名付けらています。
クレジットカード、デビットカードの表面に金色のチップが埋め込まれているものです。
日本では、2002年から導入が進められており、東京オリンピック開催される2020年までに普及率100%を目指しています。
これまでの磁気テープ仕様のカードの欠点
EMVが導入される大きな要因の1つとして、これまで発行されていたクレジットカードとデビットカードの不正使用がありました。
カード情報は、裏面の磁気テープに集約されていたので、カードから情報を抜き出すことが簡単で、一度、抜き取ってしまえば、複製することが可能となり、複製されたカードが利用されることによって、年間100万ドル以上の被害が出ていました。
EMV導入によって、カード所有者などの情報が、磁気ストライプからICチップに変更され、カードを利用する度に、新しいセキュリティコードが生成されます。
そのため、もし、情報を抜き取られたとしても1回限りとなり、カードを複製され、不正使用されることがなくなるのです。
ヨーロッパでは、2010年にほとんどEMV化が完了していますが、アメリカでは、2015年10月から、導入が開始されています。
導入が遅れた背景には、
「磁気カードでも十分に対策が可能」
というカード発行側の意見があったためです。
発行済みカードの25%が、EMV付きになっていて、
2016年には、73%
2017年には、96%
のカードが、EMV付きになる見込みです。
非接触型の決済端末の普及
アメリカで、EMVが導入された後、問題として指摘されているのが、決済に時間がかかるために、レジの行列が伸びるということです。
・端末にカード挿入して、販売価格などを入力
・顧客がPINコード(暗証番号)を入力
・承認されると、レシート発行
という流れになるため、磁気テープ仕様のカードよりも、時間がかかるのです。
しかし、アメリカでは、EMVの導入に合わせて、EMV コンタクトレス端末の導入が進められているようなので、この問題も、時間の経過とともに少なくなるのではないでしょうか。
EMV コンタクトレスは、Near Field Communication(NFC)という国際標準規格ISOの非接触型の通信技術を利用したもので、カードを端末にかざすだけで、決済が可能となります。
日本で普及している「おさいふケータイ」は、この技術が使われています。
VISAが、payWave
MasterCardが、PayPass
として、EMV コンタクトレスサービスをそれぞれ発表しており、一部のカードに機能が搭載されています。
話題になっているApple Payも、EMV コンタクトレスと互換性があるので、payWave・PayPassの端末で決済が可能となります。
クレジットカードの普及率
日本クレジット協会が発表している数字では、
2013年3月末で、
発行済クレジットカード枚数:2億5,979万枚
会員契約数 :2億2,781万件
ショッピング信用供与額 :40兆6,863億円
となっています。
単純計算で、1人あたり2枚持っていることになります。
カードブランドとしては、Visa、Master、JCBが、メジャーどころになります。
アジアでのカードのマーケットシェア
「THE NILSON REPORT」によると、2014年度、アジアでのクレジットカードブランドのシェアは、
・UnionPay:73%
・Visa:15%
・Master Card:8%
・JCB:2%
・Amex:1%
・Diners:1%以下
となっています。
カード発行枚数は、2013年に比べて15.8%増加していて、60億2,400万枚。
その内、UnionPayが、49億4,000万枚となっています。
決済のボリュームは、
2013年と2014年の比較すると、
UnionPay :5,167→6,879
Visa :1,224→1,376
MasterCard:685→795
JCB :163→193
Amex :114→129
Diners :9→9
(10億ドル単位)
UnionPayの勢力が拡大しており、香港・中国・マカオだけではなく、日本をはじめとして、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどアジア各国で、UnionPayの表記を目にします。
UnionPayが爆発的にシェアを伸ばしている背景には、銀行のATMカードにUnionPayがくっついており、デビットカードとして利用できる点です。
デビットカートとクレジットカードの大きな違いは、後払いできるかできないかです。
デビットカードは、即時決済となり、後払いができないカードなので、リンクされている銀行口座から、即時引き落としとなります。
ATMで現金を引き出して、店頭に持って行って決済するよりも、デビットカードを利用したほうが便利というイメージです。
また、カードを発行するのが、カード会社ではなく、銀行になり、別途申し込みに際して信用調査がないため、発行枚数が多くなっているのです。
2015年12月18日にAppleがUnionPayとの提携を発表し、中国で提供する計画が明らかになりました。
UnionPayは、「QuickPass」という独自の非接触型決済サービスを提供しているので、Appleは、そのサービスに乗っかる形となります。
今後も、ますますUnionPayによるカード発行・決済シェアは、上昇していく可能性が高いです。
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