ビットコインATMの数と在留邦人の数を確認してみると、長期滞在のためビザが取得しやすい国としては、フィリピンが候補となります。そこで、フィリピンの暗号資産、仮想通貨、暗号通貨取引所の現状についてお伝えしていきます。
国外滞在時の強い味方ビットコインATM
仮想通貨/暗号通貨投資家が、日本国外に滞在する際に、心強い味方なるのが、ビットコインATMです。
万が一、現金が必要になった時に、頼れるためです。
ビットコインをスマートフォンのウォレットに入れておくことで、ビットコインATM(ビットコイン → 法定通貨 へ両替できるもの)があると、すぐに法定通貨を手にできます。
ビットコインATMを利用する上では、
・携帯電話番号の認証が必要
・スマートフォンのウォレットが必要
・ATMで表示される英語を理解する必要
であり、また、
1日:5万円までの引き出し制限手数料:5%
などといった利用に縛りがあるので、ビットコインATMをメインで使いましょう!というのではなく、あくまで非常時に利用できるという認識です。
ビットコインATMは、どれだけ普及しているのか?
Coin ATM Radarのサイトを見てみると・・・2018年7月上旬時点で、
国・地域別の設置箇所を確認していくと・・・
オーストラリア:49箇所
香港:16箇所
日本:11箇所
シンガポール:10箇所
フィリピン:9箇所
台湾:7箇所
ベトナム:3箇所
マレーシア:2箇所
ニュージーランド:2箇所
タイ:1箇所
インドネシア:1箇所
韓国:1箇所
欧米では・・・
アメリカ:2,130箇所
カナダ:591箇所
オーストリア:201箇所
イギリス:160箇所
ロシア:62箇所
スペイン:58箇所
となっています。
欧米で圧倒的に普及していることが分かります。金融先進国の香港・シンガポールでも10箇所程度なので、まだまだアジア圏では、普及していません。
ビットコインATMの設置場所と台数を見てみると、欧米に比べて、アジアは圧倒的に少ないことが分かりました。
なぜ、ビットコインのATMの設置場所を確認したのか?
それは・・・海外リタイアメントを考える仮想通貨/暗号通貨投資家が、滞在先を選定する上で、1つの指標になるのでは?と考えたためです。
現時点で、ビットコインATMの設置台数が少ないということは・・・
・仮想通貨/暗号通貨が普及していない
・仮想通貨/暗号通貨に対して、政府が厳しいスタンスを取っている
・国民の所得などが十分でなく、購入できる層が限られている
・金融システムが閉鎖的である
などが考えられます。
新しいことに対する国・政府の動き方が垣間見えて、さらに生活していく上で必須となる金融環境にも考えが及ぶことになります。
「億」単位の利益を確保して、海外リタイアメントする仮想通貨/暗号通貨投資家にとって参考にすべきと言えます。
日本から渡航距離が近いアジアの国・地域では・・・
オーストラリア、香港、シンガポール、フィリピン、台湾、ベトナム、マレーシア、ニュージーランド、タイ
ということになります。
在留邦人の数を確認してみると・・
では、実際に日本人が滞在している先はどこの国・地域が多いのでしょうか?
「海外在留邦人数調査統計 平成29年要約版」から、海外に滞在している人の人数を確認してみます。
在留邦人総数=1)永住者+2)長期滞在者
*言葉の定義・・・在留邦人海外に3か月以上在留している日本国籍を有する者
1)永住者在留国などより永住権を認められており、生活の本拠を我が国から海外に移した邦人
2)長期滞在者3か月以上の海外在留者のうち、海外での生活は一時的なものであり、いずれ我が国に戻るつもりの邦人
在留邦人の滞在先としては・・・
北米:36.89%アジア:29.27% 大洋州:8.69%
で、約75%を占めています。
永住権制度がある国・地域には・・・
アメリカ:419,610人
カナダ:66,245人
中国:131,161人
韓国:38,060人
シンガポール:36,963人
タイ:67,424人
マレーシア:22,774人
台湾:20,162人
フィリピン:17,021人
ベトナム:14,695人
カンボジア:2,492人
オーストラリア:89,133人
ニュージーランド:17,991人
というデータが公表されています。
永住者の国別では・・・
アメリカ:約40%
オーストラリア:約11%
ブラジル:約11%
3か国で、永住者の60%を超えていて、
カナダ:約9.1%
イギリス:約4.1%
アルゼンチン:約2.5%
ドイツ:約2.3%
ニュージーランド:約2.1%
韓国:約2.0%
フランス:約1.7%
8カ国で永住者の80%を占めています。
*ただこの数字は、在外公館に提出されている「在留届」を基礎資料にしているので、・複数の国、地域で届け出ている人・長期滞在しているが、届けて出ていない人などにより、完全な数字ではありません。
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、長期滞在、永住共に多くの日本人が選択している滞在先ということができます。
在留邦人が多い=生活環境が整っている
在留邦人の数を確認したのは、現地に日本人が多い=日本人が生活できる基盤があると考えるためです。
具体的には、日本語に対応している病院や日本料理レストランや日本の食材が購入できるスーパーなどです。
子供の頃から複数の国・地域に滞在していると、それぞれの場所に順応しやすいですが、20歳を超えから海外で生活するようになると、日本基準で全てが整ってしまっているので、簡単には順応できません。
そのため、日本人が住んでいるというのは、滞在先を選ぶ上でとても大切なことになります。
・ビットコインATMが設置されている
・永住権制度があり、在留邦人が多い
・査証(ビザ)が取得しやすい
・日本から渡航がしやすい・税制が厳しくない
という国・地域として挙げられるのが、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、マレーシア、台湾、タイ、フィリピン、ベトナムです。
オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポールは、査証(ビザ)取得のハードルが高く、また生活コストが高くつくので、資産に余裕があり、毎月安定したキャッシュフローがある状態でないと、滞在するのは厳しいです。
日本の取引所と海外の取引所
仮想通貨/暗号通貨の取引所について、日本の取引所は、金融庁によって業務改善命令が出されるなど、利用者保護のために、国が動いています。
海外の取引所についても、金融庁から何かしらの行動があり、HPから日本語が削除されたり、日本居住者の利用ができなくなったりしています。
バイナンス(Binance)は、金融庁から「無登録で仮想通貨交換業を行う者について(Binance)」という形で警告書が出されています。
まだまだ規制については、整えている段階なので、今後どのようになっていくのか?は先行きは不透明です。
参考として、海外FX業者さんで、金融庁から警告書が出されるケースは、
・日本で登録されていない
・日本人が多く利用している、認知度が高い
といった場合です。「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
FX業者さんの拠点は海外で、海外現地の基準に従って登録されている場合が多く、日本の金融庁が警告を出しても、運営を停止させたり、内部を調査するといったことはできません。
FX業者さんが、日本で登録しない理由の1つが、レバレッジ規制などがあり、営業がしづらくなるといった事情が挙げられます。
日本の規則に従って登録されていないので、日本人へのサービス提供はダメ(投資家保護の観点から)けれども、日本人が利用するのは、自己責任。
資金が無くなってしまった、取引所が破綻したとしても、日本国としては、何もできません。ということになります。
日本居住の投資家が海外拠点の取引所を利用する場合には、日本の取引所とは、環境や制度が異なるため、リスクをよく把握しておく必要があります。
法定通貨の入出金などの取扱いがある仮想通貨/暗号通貨取引所は、身分証と住所証明書の提出が求められることが多く、日本居住者へのサービス停止により、閉め出される可能性があります。
海外での住所を証明できるように、書類を準備しておくのも、仮想通貨/暗号通貨投資家のリスク分散の1つと言えます。
フィリピンの仮想通貨取引所事情
ここでは、まず査証(ビザ)が取得しやすさから、フィリピンの仮想通貨/暗号通貨の状況を見ていくことにします。
フィリピンでは、仮想通貨/暗号通貨は、どのように扱われているのでしょうか?
2018年7月上旬に、仮想通貨/暗号通貨の2つの取引所が、中央銀行によって承認されました。
*フィリピンの中央銀行は、Bangko Sentral ng Pilipinas(BSP)です。
2つの取引所は・・・
・Virtual Currency Philippines
・ETranss
です。
法定通貨(フィリピン・ペソ)を、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)に替えることができます。
これまでフィリピンの中央銀行に承認されている仮想通貨/暗号通貨取引所としては、
・Rebittance
・Betur(Coins.ph)
・BloomSolutions
があり、今回の承認により、全部で5つということになります。
CEZA grants licenses to crypto firms
また、フィリピン・カガヤン州の経済特区であるCEZA(Cagayan Economic Zone Authority)で、3つの仮想通貨/暗号通貨企業・取引所に、ライセンスが付与されました。
経済特区内に、3つの取引所の内、2つが香港ベース、1つがタイベースになります。
香港ベースの取引所の1つが、
・Hong Kong’s Golden Millennial Quickplay Inc. Ltd
他2社の名前は、まだ公開されていません。
各取引所は、ICO(Initial Coin Offering)詐欺の避難所ではないことを保証するために、2年間の事業期間内に、100万米ドルを初期投資しなければなりません。
CEZAには、70社が申請をしていて、
申請には・・・
・申請料:100,000米ドル
・ライセンス料:100,000米ドル
・適正確認作業:100,000米ドル
の手数料が必要となり、すでに3社が全額支払い済みになっています。(ちなみに、承認されなくても、この手数料の払い戻しはありません。)
フィリピンでの仮想通貨/暗号通貨に関する中央銀行の体制
BPS(中央銀行)の体制については、2017年2月6日に発行されているGuidelines for Virtual Currency (VC) Exchangesで詳しく記述されています。
※Virtual Currency (VC)という用語が用いられていて、Crypto Currencyではないです。
Bangko Sentral(中央銀行)は、バーチャル通貨(VC)システムが、国内外の資金の迅速かつより経済的な送金能力を考慮して、特に支払と送金のための金融サービスの提供に革命をもたらす可能性を認識している。
バーチャル通貨(VC)は、中央銀行によって発行されたり、保証されたり、商品によって支えられたりしていないため、ビットコインなどのVCを通貨として推薦するつもりはない。
法定通貨がVCに交換または変更されると、簡単に移転可能となり、資金や支払いサービスの適切な移動や移転を容易にすることを認識しています。そのため、仮想通貨取引所は、送金会社や送金会社に似ていると考えられる。
取引所というよりも・・・
海外拠点の取引所を利用していると、仮想通貨/暗号通貨を取引するのに特化されている印象を受けます。証券会社の口座で、株式、為替、ETFなどを取引するのと同じです。
これは、フィリピンでも同じなのでしょうか?
フィリピンの仮想通貨/暗号通貨取引所のCoin.ph、Rebit(Rebittance )は、2016年から口座を持っていますが、
・メインに送金、公共料金などの支払
・取扱いがビットコイン(BTC)のみ
と、仮想通貨/暗号通貨の取引がメインというよりも、生活に密着した形で、ビットコイン(BTC)を法定通貨のように使うイメージです。
新しく認可された2つの取引所では、イーサリアム(ETH)の取引もできるようなので、選択肢が広がることになります。
ビットコイン(BTC)を利用した、国外からフィリピン国内への送金は、年々増加しています。
通常の銀行による海外送金や利用するよりも、ビットコイン(BTC)を利用すると、購入・送金・換金手数料を考慮すると、高くつくケースがあります。
ただ、多くのフィリピン人は、国外から国内への送金に、ウエスタンユニオン(Westan Union)などの国際送金サービス事業者さんを使うケースが多く、両替・送金などの手数料と手間、到着までの時間を考慮すると、ビットコイン(BTC)で送ることを選んでいると考えられます。
法定通貨については、やりとりするのに全て規則が決まっていますが、その不便な部分をブロックチェーンを用いた仮想通貨/暗号通貨の技術によって補い、より便利に利用できる環境が整ってきています。
フィリピン・ペソの持ち出し制限
ただ、仮想通貨/暗号通貨投資家が、フィリピンをリタイアメント先として選ぶ上で注意しなければならないのが、フィリピンペソ(PHP)の持ち出し制限と国外送金制限です。
・持ち出し制限50,000PHP以上は、中央銀行の事前承認なしに持ち出しできない。
(以前は、10,000PHPでしたが、2016年9月15日に増額されました。)
・国外送金制限外資系銀行の口座開設する場合、必要な通貨の種類を聞かれ、通貨ごとに口座を開くことになります。
その際、注意事項として、
・フィリピンペソ(PHP)口座からの海外送金が制限されていること
・米ドル →フィリピンペソ →米ドルの再両替が不可であること
が告げられます。
フィリピンペソ(PHP)の送金は、可能ですが、
・銀行支店による承認
・送金目的証明書の提出
などが求められるとのこと。
https://www.bdo.com.ph/sites/default/files/pdf/LTS%20February%202017.pdf
ウエスタンユニオンを利用すると、フィリピンペソ(PHP)を国外に送金できます。
香港などのように、自由に、フィリピン国外からインターネットバンキングを利用して、国外送金するのが難しいのです。
フィリピンペソ(PHP)の持ち出し・送金を制限することで、国外への流出を防ぎ、国内経済を守るという意図があります。
フィリピンペソ(PHP)の送金が難しいのであれば、その代わりに、
・ATMカードを使って国外で引き出す
・ビットコイン(BTC)にして国外に送る
といった別の方法を活用する必要があります。