ビットコインを含め、仮想通貨/暗号通貨の価格が大きく変動している。6月上旬から7月下旬までの約1ヶ月間で、ビットコインの価格は、1BTC=2,900米ドルから1,900米ドルまで下落し、仮想通貨/暗号通貨の市場規模は、約11兆円から約6兆6千億円まで縮小することとなった。
ビットコインの分裂問題が大きく報道され、日本国内の取引所からは、ビットコインの入出金一時停止案内があり、その不安から現金への巻き戻しが起こったためと見られている。
時価総額の大きいオルトコインも、大きく下落し、直近の高値からすると・・・
イーサリアム1ETH=410米ドルから137米ドルへ
リップル1XRP=0.4米ドルから0.12米ドルへ
ネム1XEM=0.28米ドルから0.09米ドルへ
50%以上下げ、5月から仮想通貨/暗号通貨に資金を投入した人にとっては、厳しい局面を迎えた。
7月16日付近を底として、現在は、市場規模は、約9兆円
ビットコイン1BTC=2,570米ドル
イーサリアム1ETH=208米ドル
リップル1XRP=0.17米ドル
ネム1XEM=0.158米ドル
と値を戻している。
仮想通貨/暗号通貨の種類を調べるには?
仮想通貨/暗号通貨には、ビットコインとそれ以外=オルトコイン(Alternative Coin)があり、それぞれの仮想通貨/暗号通貨の価格推移、市場規模、供給量などを一覧で確認できるのが、
「CryptoCurrency Market Capitalizations」
一覧を確認すると、供給量に「*」のマークが入っていて、注釈に「Not Mineable」=採掘できないというものがいくつかある。
仮想通貨/暗号通貨を大きく分けると、
1:採掘されて、新しい仮想通貨/暗号通貨が出て来るもの
2:運営元が、全ての仮想通貨/暗号通貨が発行して、それを市場に放出しているもの
の2つがあり、「Not Mineable」は、2に該当することになる。
取引量の多い仮想通貨/暗号通貨では、
ビットコイン(BTC)=1
イーサリアム(ETH)=1
リップル(XRP)=2
ライトコイン(LTC)=1
ダッシュ(DASH)=1
ネム(NEM)=2
イオタ(MIOTA)=2
モネロ(XMR)=1
1:に該当する仮想通貨/暗号通貨は、専用の機材を用いることで、採掘できるようになっており、それが価格の裏付けになるという考えがある。
仮想通貨/暗号通貨を巡る税制
全てがきちっと決まっている株式・投資信託などの税制とは異なり、仮想通貨/暗号通貨を巡る税制については、まだ全てが確定していない状態となる。
Twitterでは・・・
「税務署に確認したところ、仮想通貨を日本円にしていなくても、ビットコイン決済を利用した場合、利益部分については、全て雑所得として取り扱う。また、ビットコインで、オルトコインを購入した場合、発生した利益にも課税。」
という返答があったと報告する人も。
税務署の担当者によって、返答内容が異なっているケースがあるようで、情報が錯綜しているが、利益・含み益については、課税対象になる可能性が高いとみられている。
そんな中、日本経済新聞の2017年6月21日付け記事によると・・・
2017年9月に、会計ルールの草案が作成される見通しで、日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会の事務局は、
・取引量が多い仮想通貨→時価で評価
・取引量が少ない仮想通貨→所得原価基準で減損
の要否を検討という考えを示し、草案は作成後公開され、2ヶ月以上に渡って意見を募る考えだという。
(*日本経済新聞2017年6月21日付け記事より抜粋)
ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
(所法27、35、36)
仮想通貨/暗号通貨を購入・取引して得た利益については、「雑所得」との扱いが明確に定義された。
株式やFXのように優遇税制がなく、累進課税になるため、利益額の詳細を確認するために、取引履歴の保存が必須となってくる。。
アメリカの仮想通貨/暗号通貨を取り巻く環境
ICO=Initial Coin Offering仮想通貨/暗号通貨の新規売出しが、盛んになっており、販売開始数時間で数十億円を集めるプロジェクトが次々と誕生している。
株式市場でいうところの、IPO=Initial Public Offeringのようなものになる。
最近で話題になったのは、Basic Attention Token(BAT)Status(SNT)Bancor (BNT)などがある。
各プロジェクトの将来性を見越し、一般に流通する前に、ICOの価格で購入しておくことで、値上がりを期待できることになる。
ICOとIPOの大きな違いは・・・
IPOは、証券取引所に上場するための具体的な基準が設けられており、会計事務所のサポートの元手続きが実施されるので、どんな会社でも簡単にできるわけではない。
一方、ICOは、具体的な基準などはなく、どこの取引所で取引ができるのか?明確でない状態で売出しが実施されるケースが少なくない。投資家は、ホワイトペーパー=プロジェクトの概要を元に判断するしかない。
そのため、IPOに比べて、ICOはリスクが高いと言える。これまで、複数のICOの情報を追い、参加した中で気になったことがある。それは・・・ICO参加手順の中で、「あなたは、アメリカ国民ですか?」という確認項目があることだ。
この項目に「はい」と答えると、規制上の理由で、参加できないケースがあり、アメリカでは、国民のICOへの参加が、一部で規制されているようなのだ。
アメリカで、仮想通貨/暗号通貨が、禁止されているのかというとそうではなく・・・
アメリカ内国歳入庁(IRS)は、仮想通貨/暗号通貨を資産として認定しており、2014年に発表した指針の中では、「仮想通貨を使った取引で、得た収益は申告の対象になる」と通達している。
これまでに、仮想通貨の取引による脱税が発覚した例としては、・複数口座を活用して、ビットコイン取引を技術費として申告・オフショアへ送金したお金を、ビットコインに換金してアメリカに戻したがあるとされている。
またアメリカ内国歳入庁は、2016年11月16日に、ビットコインを使った取引で得た収益を申告していない納税者がいないかどうか調査するため、アメリカ取引所大手の「Coinbase」に、利用者情報の提出を求める裁判所命令を出すよう申し立てている。
提出を求めているのは、・利用者の情報・取引記録・取引明細書・各利用者の支払いの記録などになる。
ちなみに、「Coinbase」は、2017年2月27日に、ハワイでのサービス提供の停止を発表。
理由としては、ハワイ金融機関部門(DFI)から、顧客のために保有している仮想通貨/暗号通貨の価格相当の現金引当金の保有が求められたため。アメリカでの仮想通貨/暗号通貨を取り巻く環境は他国に比べ厳しくなっている現状がある。
日本では、ICOへの参加については、規制がないものの。
2017年4月1日に施行された仮想通貨交換業者を登録制にするなどを盛り込んだ「銀行法施行令等の一部を改正する政令等」によって、仮想通貨/暗号通貨取引所での・氏名、住所の登録・身分証明書の確認・登録住所での本人確認書類の受取りが義務付けられているので、口座と顧客情報の紐付けが確実に実施されている状態になる。
今後、投資家保護の観点および取引の透明性の観点から規制が強化される可能性があると言える。
所得税法上での日本居住者と非居住者
所得税を納める義務は、日本居住者は、全世界の所得に対して、日本非居住者は、日本国内で生じた所得に限り、発生する。
所得税法上では、
居住者とは・・・
・日本国内に「住所」がある
・現在まで引き続き1年以上「居所」がある個人
非居住者とは・・・
・居住者以外の個人
居住者判定における「住所」と「居所」は、
「住所」:
生活の本拠を指し、日本国内に生活の本拠があるかどうかは、客観的事実によって判断される。
「居所」:
生活の本拠には至らないが、その人が現実に居住している場所。
滞在地が2か国以上にわたる場合は、「住所」の判定として、住居・職業・資産の所在・親族の居住状況・国籍など、客観的事実によって判断される。
(国税庁:タックスアンサーNo.2875居住者と非居住者の区分より抜粋)
タックスヘイブンのオフショア法人を活用したスキームが、さまざま存在するが・・・ノミニー(名義貸し)を使って、海外法人を活用したところで、実質的に日本居住者がオーナーの場合は、日本で所得税を納税しなければならないケースがある。
オフショア法人を設立しても、SWIFTコードがある銀行の口座を開けずに、決済代行業者の口座を利用することになり、口座維持・送金などの手数料が高く、入出金に長い時間を要すこともあり、大きな負担を強いられるケースもある。
「金(カネ)を持っていなければ、こんなに苦労することはなかったのに・・・」
という状態に陥りかねないので、日本居住者に関する税制については、税理士さんに最新の状況を確認しておく必要がある。
7年間経過したら自分の金(カネ)になる
全ての経営者・投資家が、理解しなければならないこと。
なぜなら、日本の税務調査は、最大7年間遡って調査を受けることになるルールが存在するからだ。
税務調査において、過去にさかのぼる対象年数のことを、「遡及年数」というが。「遡及年数」は、通常3年分を実務として調査対象とされるものの。否認やミスを指摘されたなどの問題があった場合は、「遡及年数」は5年間となる。
さらに、意図的に脱税したことが、税務調査で判明してしまった場合、「遡及年数」は7年間となる。
その間、「帳簿」と「書類」も残しておかなければならない。
「帳簿」
総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
「書類」
棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など
「帳簿」や「書類」総勘定元帳や決算書のみならず、注文書、契約書、領収書などは、7年間の保存が必要とされている。
税務調査があった場合には最大7年間さかのぼって調査を受ける事になり。書類の保存が義務付けられている。税務調査において、それが正しいか、正しくないか・・・否認やミスの指摘・・・。意図的な脱税・・・。
経営者の方で、自己主張をしたところで、最終的にこれを決めるのは、民間の法人・個人ではなく、税務署、すなわち「お上」である。いつの世の中も、「お上」が「政策」を決め、「民間」は「政策」に対する「対策」しかできない。ベクトルは常に同じ方向だというのが現実。
これまで、沢山の経営者を見て来た中で、ビジネスの才覚があり、バンバン儲けていたものの、7年間を経過する前に、それが自分の金(カネ)であると勘違いしてしまい、高級車を乗り回したり、高い家賃のオフィスや家を借りたり、高級店で飲み食いしたり使い方も半端無く、現金がドンドン減って行く。
そういうタイミングで、税務調査が入り、否認やミスの指摘・・・。意図的な脱税・・・。追徴課税がかかり、まともに払って「飛んでイスタンブール」。
もしくは、会社を潰して「飛んでイスタンブール」。
どちらにしても、「飛んでイスタンブール」になってしまう場合が多い。
そのリスクを避けるためには、堅実な潰れない経営をするのなら、実質もうけた金(カネ)は、7年間まともに使えないことになる。
つまり、7年間経つまでは、そもそも「もうけた金(カネ)」とは、言えないのである。7年間経ってようやく「もうけた金(カネ)だ!」と胸を張って言えることになるのだ。
追伸
「CryptoCurrency Market Capitalizations」によると、仮想通貨/暗号通貨の市場規模は、現在約9兆円。1日の取引規模は、約300万米ドル=約3,000億円。
一方で、BIS(国際決済銀行)によると、FX(外国為替証拠金取引)の1日の取引規模は、5兆1,000億米ドル=約510兆円大きな差があるが、果たして、この差が縮まっていくのか?仮想通貨/暗号通貨の価格については、将来を楽観した予測が多い。