2020年9月8日付けで、ニューヨーク司法長官オフィス(New York Attorney General’s office:NYAG)は、 テザー(Tether)社がビットフィネックス(Bitfinex)へ9億米ドル与信限度額の書類を直ちに提出するように求めました。
2020年9月8日付け Re: In the Matter of iFinex Inc., et al ., Index No. 450545/2019
NY AG Asks Court for New Order to Make Bitfinex Turn Over Tether Loan Documents
書類提出を求めているポイント
今回の書類提出の期限は、60日以内となっています。
書類に関するポイントは、2019年4月にビットフィネックス(Bitfinex)が、8億5,000万米ドル以上の自社と顧客資産へのアクセスができなくなり、テザー社から借金をしたことです。
問題なのは、テザー(Tether)社とビットフィネックス(Bitfinex)は、企業所有者と幹部をシェアしている部分です。
アメリカでの裁判理由とこれまでの判決
なぜアメリカ・ニューヨークで、BVI法人や香港拠点の取引所の裁判が行われているのか?
それは、過去にアメリカ人に対して、Bitfinexがサービスを提供していたという履歴があるためです。
2019年5月の判決:
・通常業務以外でTehterのいかなる資産もBitfinexや他の会社に貸してはいけない
・ニューヨーク司法当局が求めた資料は提出する必要がある
・ビジネスを継続して良い
2020年7月の判決:
・ニューヨークの司法当局に捜査権が認める
参考:BitfinexのUSDトラブルとTether
参考:TetherのNY裁判で今後真相が明らかに 裏付けないとBTC一時暴落か!?
Tether USDは様々なチェーンで発行している
Tether社が発行しているTether USD(USDT)は、米ドルなどの裏付けがあり、1USDT=1USDとされ、市場に流通しています。
現在USDTが発行されているチェーンは、Omni、Ethereum、Tron、EOS、Liquid、Algorand、SLPなどです。
複数のチェーンで発行されるのは、1つのチェーンでの流通だと過度に負荷がかかり、手数料の高騰を招いてしまうためです。
多く利用しているのが、中国の投資家と言われており、自由に国外送金ができない人民元を、OTC(Over The Counter)で、USDTに交換して、その後BTCなどへ交換し、資産フライトをしている実情があります。
USDTは1兆円以上発行されているが裏付けは?
ただUSDTの発行履歴を見ると、本当にそれだけの資金がTether社に入っているのか?
公式サイトで現在の発行残高を見ると、9月10日現在で、14,600,279,239.49米ドル=1兆4,600億円(1米ドル=100円換算)です。
暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)の時価総額が、334,320,224,991米ドルですから、4%に相当します。
2019年3月下旬からUSDTの発行スピードは上がっており、2020年3月の暴落からはさらに加速しています。
2019年3月31日:2,033,952,388米ドル
2020年3月30日:4,658,866,904米ドル
1年で2.3倍ほどでしたが、6ヶ月で3倍です。
全世界的な金融緩和の流れの中、法定通貨の供給量が増えているので、その分暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)に資金が流入しているのでしょう。
Tetherの裏付け資産は74%
TetherとBitfinexの顧問弁護士Stuart Hoegner氏が、2019年4月30日時点で、法定通貨と短期証券での裏付けは、Tether資産の74%であると述べました。
Stuart Hoegner Affidavit 4-30
Tether Lawyer Admits Stablecoin Now 74% Backed by Cash and Equivalents
USDTがステーブルコインの王者でありながら、それ以外のステーブルコインと別に分類されるのには、このあたりの不透明さがあります。
まとめ
ニューヨークでの裁判で、資産の裏付け証明にまで司法の手が伸び、100%ないと判明した場合は、暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)市場へのダメージは大きなものとなります。
・一時的には、Tether USD売り:暗号資産買い=暗号資産の価格が上昇
・その後、暗号資産売り:法定通貨買い=暗号資産の価格が下落
が予想されます。
それと共に、暗号通貨取引所や発行母体への監査基準などが導入され、市場が冷え込む可能性があります。