スイスの秘密主義の終焉と中国との関係

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スイスの銀行が続々と、アメリカ企業の脱税幇助での起訴を逃れるためアメリカ司法当局に顧客情報を提出しています。

スイスは、個人名義が一切表に出ない匿名口座ナンバーズアカウントというものがあり、さらに、永世中立国として他の国から圧力を受けにくい政治環境、また優遇された税制などから、世界中の富裕層の資金が集まっていました。

監査法人デロイトによると、外国人がスイスの銀行に預けている金額は、約2兆ドルで国別では最多となっています。

2009年からの大きな動き

2008年秋以降、金融システム安定化等の観点から、タックスヘイブンでの不透明な資金の流れが国際社会で問題視されました。

2009年4月に開催されたG20を契機に、国際基準による税務当局間で納税者情報と銀行の機密情報を自動交換する動きが加速しました。

大きなきっかけとしては、2008年にスイス最大手UBS銀行の元従業員が、アメリカのフロリダ州裁判所で、アメリカ人顧客の脱税を幇助したと供述したことです。

2009年には、起訴延期の合意と引き換えに7億8,000万ドルの罰金を支払い、アメリカ人顧客4,450口座情報を提出しています。

アメリカ司法当局の捜査対象になっているスイスの銀行は、起訴を逃れるために罰金を支払うことで、2015年8月までに20行位上が合意し、年内にも全ての銀行と合意に至る見通しとのこと。

アメリカ司法省が、金融危機以降に科した制裁金は総額で1,670億ドル。

85%がアメリカの金融機関で、スイスの金融機関については5%未満です。

2015年3月21日、スイスの銀行は、EUとの間で顧客情報の共有取り決めに合意しており、将来的にEU加盟国は、スイスの銀行口座保有者の氏名・住所・生年月日などの情報を確認することが可能となります。

今後スイスがターゲットとしているのは?

様々な国の富裕層たちは、代々伝わる資産を承継し、守るために匿名性が極めて高いスイスの銀行に高い手数料を支払ってきました。

顧客にとって、自分たちの情報が開示されるのであれば、わざわざ高い手数料を支払って、スイスで銀行口座を保有する必要はありません。

顧客情報の開示を迫られるスイスの銀行は、今後どのように資金を集めていくか?

スイス銀行家協会のCEOは、

「スイスを人民元の国際的な取引拠点にしたい」

と目論んでいます。

新しい市場として、中国元と中国人をターゲットとしている理由は、2013年にスイスと中国の間で結んだ自由貿易協定が2015年に発効し、7月にスイス国立銀行と中国人民銀行で二国間通貨スワップ協定が結ばれたことによります。

スイスと中国の距離が近くなることで、今後、中国が経済面でも金融面でも世界で大きな影響力を持つようになるかもしれません。

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