元本が97%吹き飛んだ2つの案件

サラリーマンのキャッシュフローと資産分散

「VIXの取引中止につきまして」2018年2月6日に届いたメール。

VIX指数に連動するETNの価値が、ほぼ無くなってしまうという事態に激震が走った。

※VIXとは・・・
Volatility IndeX の略、アメリカ・シカゴオプション(CBOE)取引所が算出している指数で、「恐怖指数」 と呼ばれている。

ETNとは・・・
金融機関などが信用力をもとに発行する外国債券を、信託受益証券として証券化したもの。ETFは、投資信託運用会社が運用する投資信託。

2018年2月5日、NYダウが史上最大の下げ幅を記録。

NYダウ:マイナス1175.21ドル、マイナス4.61%
ナスダック:マイナス273.42ポイント 、マイナス3.78%
S&P:マイナス113.19ポイント、マイナス4.10%
CME日経225先物:マイナス1,245円、マイナス5.5%

ブラックマンデーの再来となった。

この急落を受けて、VIXの数値が急騰した。

VIXの算出方法は、S&P500指数を対象としたオプションの、現在価格に近い(near the money)上下4のコール・プット合計8つの当限・翌限のインプライド・ボラティリティの加重平均。

VIXは、数値が高いほど、先行き警戒感が強いことを意味し、ざっくりした基準としては、10から20:安定 40超え:不安定

また、S&P500に、逆相関するという特徴がある。

S&P500が下落する局面で、機関投資家たちが、保険のためにプットオプションを買うことで、ボラティリティが上昇し、VIX指数も上昇する形になるため。

償還条件を迎えるとは・・・

償還になったETNの1つが、2049 NEXT NOTES S&P500 VIX インバース

ETNインバースは、ベア=売りを意味する。

2015年3月16日東京証券取引所に上場したETNで、VIXが、低い水準になる=売りというスタンスの商品であり、2015年時点から2018年2月上旬までに、基準指数は3倍以上になっていた。

元々、VIXが急上昇するケースは少なく、仕組み的に値上がりが期待できるため、インバースでの商品は人気があった。それが・・・VIX急騰を受け、ほとんど無価値になってしまった。

理由は・・・ETN目論見書に、「前日比20%以下の価格になったら償還される」という期限前償還条件が設定されていたため。信託を委託していた証券会社からの告知では、

2月5日に当該指数値が、2月2日の当該指数の終値 1,342,587.30 の 20%に相当する>268,517.46 以下に下落したため、早期償還されることとなりました。受益権一口当たりの償還金額:1,144円

とされている。2018年1月には、4万円台で取引されていたので、マイナス97%になってしまったことになる。

投資家は、リスクを取って、リターンを得ているといえども、VIXが過去最低基準であった頃には、このようなリスクが問題視されることはなかった。

購入時期により、マイナスになっている利率は異なるものの、元本のほとんどが吹っ飛んでしまうのは、精神的なダメージがかなり大きいと言える。

開発者との連絡が途絶えて暴落

2017年年末から暴落し、2月6日に底を打ち、現在戻している仮想通貨/暗号通貨市場。「LOAN OR LEASE」というプロジェクトで、2月20日、開発者との連絡が途絶え、開発がストップしてしまう事態が発生。

プロジェクトで販売していた、仮想通貨/暗号通貨LOLの価格は、98%下落した。ICOで、売り出された後、2018年1月には、取引所に上場し、売買されていたので、損失を被っている投資家たちが居る。

購入時期で、マイナス利率は異なるものの、奇しくも同じ月に、元本が97%以上毀損してしまうという事例が2件発生。

ETNの場合は、大手証券会社が信託委託者となり、東京証券取引所に上場していたので、投資家としては、期限前償還条件があるものの、大きなリスクとしては捉えていなかった。

一方、仮想通貨/暗号通貨の場合は、開発会社が、目論見書(ホワイトペーパー)を作成し、募集。条件や第三者機関による確認などはされず、その後、取引所に上場されて売買ということで、リスクが高いことを承知の上で投資している。メジャーとマイナー。リスクについての捉え方は、全く異なるが、数字上では同じような現象が発生している。

リスクを少なくしながらも・・・

このお話を聞いて、

「元本が吹き飛ぶようなリスクは取りたくない!!結局、現金で保有しておくが一番。相場価格の上下に一喜一憂したくないし。」

と考えるメンバーも多いだろう。

たしかに、相場に足を踏み入れなければ、株価や為替、投資商品の価格を確認し、その都度惑わされることはない。

平穏無事に、毎月決まった額を貯金し続けていければ、5年後、10年後、20年後に、銀行口座の中に溜まっているお金を、確実に予想することができる。

けれども、現金だけを保有することに、弱点も存在する。

たとえば、
1)物価が上昇する 2)投資商品の価格が上昇する 3)為替変動で下落するということが挙げられる。

1)物価が上昇する

賃金が同じ場合で、物価のみが上昇していったとしたら、同じお金で、買える商品の数・量が、少なくなる。つまり、お金の価値が下がってしまうことになる。

2)投資商品の価格が上昇する

たとえば、2018年1月に、26年ぶり高値を迎えた日経平均株価。1992年以来、大きく値を下げ、2003年には、7,600円台を記録していたものの、アベノミクスと日本銀行による異次元の金融緩和政策により、値を戻してきている。

一定額を、株式もしくは日経平均に連動するETFなどに投資していれば、資産は大きく膨らんでいることを意味し、現金のみを貯金している人との資産額は、雲泥の差になっている。

3)為替変動で下落する

日本円で収入を得て、日本で生活していると、外貨との関係を意識することはあまりない。輸入商品の価格が高くなることで、意識させられるぐらいで、日常生活に支障は全くない。

けれども、1米ドルが、85円と110円とでは・・・対外的に見て、資産額に大きな違いが生じている。たとえば、毎月10万円を貯金して、これまでに300万円貯まったとすると・・・1米ドル=85円では、約35,000米ドル1米ドル=110円では、約27,200米ドル手にできる米ドルは、格段に異なってしまっている。これは給料についても同じで、知らず知らずの内に、円安が進行することで、資産額は対外的に減少してしまっている。

冒頭のお話のように、ETN投資や仮想通貨/暗号通貨投資で、元本がほとんど吹き飛んでしまった投資家は、目に見える・認識できる形で損失が確定しているが・・・現金のみを保有し続けるには、認識していない・見えていないリスクが存在している。

このリスクに気がついた人が、資産を守るべく、現金貯金だけではなく、投資によって、資産を守る活動をしているのだ。

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