中国共産党の幹部や軍の用心など12人の親族などが、イギリス領ヴァージン諸島BVI(British Virgin Islands)に法人や信託会社を設立して、資産を隠し持っていると報道されました。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)
「The International Consortium of Investigative Journalists」
が、2013年5月に独自で入手した資料では、カリブ海周辺のイギリス領ヴァージン諸島やケイマン諸島など租税回避地に設立された法人や信託会社関係者として、中国在住者2万2,000名該当しました。
中国在住者が設立したペーパーカンパニーの数は、10万社にのぼっています。
2万人、10万社で、どれくらいの資産が中国から租税回避地に移動しているのか?2000年以降1兆から4兆ドル規模の資産が移動されていると報告されています。中国で租税回避地を利用している人の資産規模は、大きなものであるということが読み取れます。
通貨の持ち出し制限により、海外へお金を移動する手段が限られているため、去年末、中国人投資家からの買いが殺到して、仮想通貨であるビットコインの価格が急騰してしまうなど、中国人資産家は、どのように国外にお金を移動しようか常に考えているようです。
そこに目をつけたアメリカの大手監査法人やスイスの大手銀行などが、租税回避地での法人設立をサポートしたり、ヨーロッパの金融機関が、党の幹部や経営者をターゲットに資産管理ビジネスを行っていることのこと。色々なルートから入ってきたお金だったりするので、法人の取引などで、帳簿上に現れる資金移動は、難しかったりもしそうですね。
ちなみに、中国の法人税は、25%居住法人の場合は、国内・国外源泉の所得について課税されます。個人の所得税は、累進課税で、最大45%、中国国内に1年以上居住している個人については、中国国内外で得た収入に対して課税されます。
韓国でも
韓国の国税庁は、租税回避地のペーパーカンパニーに関する資料を手に入れ、調査を実施し、韓国人と推定される405人を抽出、267名の身元を突き止めました。2013年上半期には、脱税容疑者127名を調査して、合計で、6,016億ウォン=約540億円の追徴課税を実施しています。
韓国の法人税は、地方所得税と合わせて、最大で24.2%、個人の所得税は、累進課税で最大38%、1年以上居住している個人については、韓国国内外で得た収入に対して課税されます。中国も韓国も日本と同じで、居住者の場合には、国外収益へも課税させる税制となっています。
単に租税回避地に会社を設立しても
公開されたリストによって、簡単に法人オーナーが特定されてしまうため、資金の移動方法などを熟知していないと、追徴課税の対象となってしまいます。日本でも、去年12月に名古屋の会社が租税回避地での所得隠しを指摘され、約2億円の追徴課税となりました。
今後は、低コストで租税回避地の法人設立・運営を考えるのではなく、アマゾンやグーグルが利用している「ダブルアイリッシュ」や「ダッチ・サンドイッチ」のような合法節税スキームなど、各国の法律を熟知したコンサルタントによる合法的な資産移動手段が主流になってくる可能性があります。
日本の場合は、3年で税務調査が入るケースが多く、納税漏れが発覚すれば「加算税・延滞税」がつきます。
悪質でないケースは、本来支払う額の1.15倍
悪質なケースは、本来支払う額の1.5から2倍
になってしまう試という算があります。「税金は0だから!」と思っていたら、一気にまとまった額のキャッシュアウトが必要になることも想定できるので、日本居住者の場合は、海外税務に詳しい税理士さんに確認が必要になります。
法人の組み合わせで合法的に節税
アマゾンやグーグルなど世界展開している企業の納税について、国境を超える取引や海外で利益を上げているが、本拠地とされる国・地域での納税額が少なく、節税方法がグレーではないかという報道がありました。
「これぞ海外法人の活用の仕方!」
そのスキームについて見ていきたいと思います。
採用されている主なものは。税率の低い国に資金管理会社や子会社を置き、子会社と取引を行うスキームです。
注目するのは下記2点です。
・税法上の法人住所の規定
・管理会社と租税条約
税法上の法人住所の規定
アイルランドとアメリカにおける税法上の法人住所の違いです。
・アイルランド→法人の実態がある場所が課税上の「住所」
・アメリカ→法人を設立した場所が課税上の「住所」
アメリカに運営の実態がある状態で、アイルランドに法人を設立する。そうすることで、アメリカ・アイルランドともに「住所」が存在しない状態となり、法人税を払わなくて済むということになります。
管理会社と租税条約
・バミューダ諸島の管理会社
・アイルランドとオランダの租税条約
についてです。
スキームに登場するのは、下記5つの法人。
・アメリカ本社
・アイルランド法人A
・バミューダ諸島の法人
・アイルランド法人B
・オランダ法人
アメリカ本社が、アイルランド法人Aにビジネスライセンスを与え、アイルランド法人Aが、アメリカ本社にライセンス料を支払う。
(*このアイルランド法人Aの管理会社は、バミューダ諸島の法人)
アイルランド法人Aは、アイルランド法人Bへサブビジネスライセンスを与える。
・アメリカ本社
↓ビジネスライセンス付与 ↑ライセンス料
・アイルランド法人A(管理会社がバミューダ諸島の法人)
↓サブビジネスライセンス付与
・アイルランド法人B
アイルランド法人Aの管理会社をバミューダ諸島の会社にすることで、アイルランド非居住法人扱いとなり、アイルランドの法人税12.5%が免除されます。
さらに、ライセンス料(ロイヤリティー)は、アイルランド法人Bからアイルランド法人Aへ直接支払われるのではなく、
・アイルランド法人Bからオランダ法人へ
・オランダ法人からアイルランド法人Aへ
オランダ法人を挟んで間接的に支払われます。
☓
・アイルランド法人B
↓ライセンス料(ロイヤリティー)
・アイルランド法人A(管理会社がバミューダ諸島の法人)
↓ライセンス料(ロイヤリティー)
・アメリカ本社
◯
・アイルランド法人B
↓ライセンス料(ロイヤリティー)
・オランダ法人
↓ライセンス料(ロイヤリティー)
・アイルランド法人A(管理会社がバミューダ諸島の法人)
↓ライセンス料(ロイヤリティー)
・アメリカ本社
アイルランド法人Bからアイルランド法人Aへのライセンス料(ロイヤリティー)支払いをオランダ法人を経由することで、アイルランド国内の源泉徴収を回避することができてしまいます。
アイルランド法人A・B、2つの法人を利用することを「ダブルアイリッシュ」
その間にオランダ法人をはさむことを「ダッチ・サンドイッチ」
と呼ばれています。
世の中には、1カ国、2カ国だけではなく、複数の国を絡めた合法の節税スキームなので、素人がポッと思いつくレベルのものではないですね。
「ダブルアイリッシュ」は、1980年代後半に開発された税スキームで、多くのIT企業が採用しています。利用されているアイルランド法人の形態は、無限責任会社となっており、税法上財務諸表の開示義務がないため、一度お金が入ると、先を追うことが難しいなど課税をしたい側からは不都合が多いので、今後は、納税について議論が高まる可能性があります。