求人サイトもしくは求人メールで、「海外の口座にお金を振り込むだけの簡単バイト」という形で募集をしています。
作業内容としては、自分の口座でお金を受け取った後、5%から10%を作業費として差し引き、残りのお金を先方指定の口座に振込むというものです。
振込め詐欺のように、自分のお金がごっそりなくなるというものではなく、自分の手元には、作業費が残る仕組みです。
振込みをするだけでお金がもらえるおいしいバイトのように見えますが、実はこれは「マネーミュール」という資金洗浄のお手伝いをしていることになります。
ミュールとは、雄のロバと雌の馬を掛け合わせた動物「ラバ」の英語名で「犯罪収益の運び屋」を意味します。
どの程度「マネーミュール」でお金が動いているのかは、振り込め詐欺のようにお金がなくならない為、実態を把握するのは難しい状況にあります。
▼手数料を支払ってまで
求人を出す側は、なぜ5%から10%の手数料を落としてまでお金を第三者を通じてある口座へ移動したいのか。
それは、資金源がサイバー犯罪などで得た違法収益だからです。
第三者を通して、お金を移動することで、最終の受益者を特定することが難しく、取締りを受ける可能性が低くなり、お金を手にすることができる確率が格段に上がります。口座を一時的に使わせてもらうこと、お金の移動に協力してもらうことに手数料を支払っているということですね。
警察当局が「マネーミュール」を日本国内で確認したのは、2013年の3月。
今年の不正送金被害は、約7億6,000万円で過去最悪のペースで増加しており、「マネーミュール」がその一因と見られています。
▼7月以降に急速に増加
「マネーミュール」が、日本国内で7月以降に目立って増加してきています。
それまでは、英語の求人メールであったためスパムメールと認識され、ごく限られた日本人しか反応をしていませんでしたが、日本語表記のものが加わったことにより、より多くの日本人が振込み作業をしているとのこと。
ネットバンキングの不正送金事件で、立件されたケースはまだないようですが、犯罪の認識があれば犯罪収益移転防止法違反などに、犯罪の認識がなくても銀行法違反などに当たるおそれがあるので、注意が必要です。