保険会社のWEBサイトを見ていると、企業向けリスクマネジメントサービスとして、「キャプティブ保険」という記載があります。
キャプティブ保険会社とは?
キャプティブ(Captive)=つながれた、とらわれたという意味ですが、
キャプティブ保険会社は、リスク管理と保険料などの最小化を目的に、多国籍企業が設立する会社です。
一般的に保険会社は、広く多くの顧客をターゲットとしているため、被保険者としての企業にとっては、本来のリスクに特化されず、事故を起こさずに、保険を適用しなくても、保険料は大きく変わらないという性質があります。
そこで、自社でリスク管理できる部分については、自社で負担することを目的に、オフショア地域に自社のリスクを専門に処理するための保険会社を設立します。
これが、
キャプティブ保険と呼ばれているもので、
1)元受けキャプティブ
2)再保険キャプティブ
の2形態がメインです。
保険契約の形態
<通常>
自社・グループ会社→保険会社→再保険市場
<元受けキャプティブ>
自社・グループ会社→キャプティブ→再保険市場
<再保険キャプティブ>
自社・グループ会社→保険会社→キャプティブ→再保険市場
キャプティブでリスクを引き受けることで、保険会社に払い出した保険料がリスクに相当する部分戻ってくることになり、結果として、保険料を抑えることが可能となります。
キャプティブを利用せず、リスク部分への積立金という形だと、課税対象になりますが、キャプティブを通じて、保険制度を利用することで、キャプティブへの支払い金額は、損金という扱いになり、無税となるためです。
キャプティブの保険種目は、
カード会社であれば、旅行傷害保険
金融会社であれば、取引信用保険
などの部分になります。
キャプティブ保険を活用している会社は、
アメリカで、2,000社以上、
世界では、4,500社、
フォーチュン・トップ500社の80%以上に上ります。
税制面、手続き面で優れており、積極的に誘致しているオフショア地域やアメリカの特定の州ので設立されており、オフショア地域の中でも、多くのキャプティブ保険が組成されているのがケイマン諸島とバミューダです。
日本とアメリカの企業はどこのキャプティブを活用しているか
日本の企業は、日本の制度上、国内の資産や賠償責任の保険を海外の会社に直接かけることが禁止されているため、
保険会社を間に挟む再保険形で、キャプティブを活用しており、
経済産業省発表の資料によると、
1968年から2003年にかけて、日本企業が設立したキャプティブは、
バミューダ:33
シンガポール:23
アイルランド:16
となっています。
シンガポールは、国内企業の利便性向上を目的として、キャプティブ法を制定しており、引受種目の制限がないことから、注目されていましたが、タックスヘイブン対策税制など日本国内制度との兼ね合いがあり、活用のスピードが鈍化しているとのこと。
ケイマン諸島の金融当局であるCIMA(Cayman Islands Monetary Authority)2014年6月発表の資料によると、
キャプティブ保険の数は、
2010年度
ケイマン:738
バルバドス:242
バミューダ:845
BVI:219
ガンジー諸島:333
ハワイ:168
サウスカロライナ州:160
バーモンド州:576
↓ ↓ ↓
2013年度
ケイマン:760
バルバドス:ー
バミューダ:831
BVI:ー
ガンジー諸島:344
ハワイ:ー
サウスカロライナ州:ー
バーモンド州:588
3年間で、バミューダでの保険数が減り、ケイマン、バーモンド洲での保険数が増えています。
今後は、産業インフラや運営コストによる魅力よりも、キャプティブを活用しようと考える本社所在国の税制厳格化や企業統治に対する監視強化の予測から、規則、規制が、よりクリアになっている地域が好んで選ばれる傾向にあり、キャプティブを活用しているアメリカ企業の約半数は、アメリカ国内にキャプティブを持つようになっています。