プエルトリコの財政危機

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「課税対象年度のうち183日以上滞在すれば、個人の収入や株などの売買益については課税しない」
(*2035年12月31日期限)

2012年に投資家を誘致するため「Investor’s Relocalization Act」として知られる上記法律を施行したアメリカ自治領のプエルトリコ。2013年8月に放送されたNHKスペシャルで、アメリカの投資会社社長の移住先として紹介され話題となっていました。

プエルトリコのおさらい

Commonwealth of Puerto Rico

カリブ海北東に位置するアメリカ合衆国の自治的・未編入領域。ニューヨークから飛行機で3時間の位置にあり、亜熱帯に属し、平均気温は25.4度ほどで、8月から10月はハリケーンが襲来することもあります。独立国ではなく、アメリカ合衆国の自治州なので住民は、アメリカ国籍、市民権を持ち、通貨もUSドル、郵便もアメリカの郵政公社ですが、税金は連邦税が免除され、それに相当する税金はプエルトリコ政府に支払うことになります。リゾート地として人気を博していましたが、他にの国・地域のリゾート開発の波を受けて、観光業で収益を上げることができなくなりました。そこで、生産拠点をプエルトリコに置く米国企業向けの優遇税制を導入することにより、多くの製薬企業の誘致に成功し、経済が活性化しました。

米国企業向けに優遇税制を設けて、製薬会社などの誘致に成功して、製造業が、GDPの約半数を占めていました。

 

プエルトリコの現状

米国企業向けの優遇税制は2006年で廃止され、失業率が10%を上回り、アメリカ本土に人が流出したこともあり、過去10年で人口が7%減少しています。その後、新たに資金を調達し、経済を活性化させるには至っておらず、失業率は、平均して10%超、2014年1月には、15.5%に達していました。債務残高も増え続けて、現在は、700億ドル相当に上っており、これは、アメリカで財政破綻をしたミシガン州デトロイト市の約4倍の負債となっています。

その状況をうけて、2014年2月に格付け機関の

・スタンダードプアーズは、BBプラス ・ムーディーズは、Ba2

とプエルトリコの格付けを「投機的」なものへと格下げし、さらなる格下げもあり得ると警告しています。

 

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720億ドルの債務が、2015年8月1日の償還期限に支払えないと宣言し、8月3日に米格付け会社ムーディーズが、今回の事態をデフォルトと認定しました。

プエルトリコの現状

プエルトリコは、カリブ海北東に位置するアメリカ合衆国の自治的・未編入領域ですが、住民は、アメリカ国籍・市民権を持っており、流通している通貨は、アメリカドルです。

財政を回復させるために、2035年12月31日を期限として、

「課税対象年度のうち183日以上滞在すれば、個人の収入や株などの売買益について非課税」

という資産家を誘致するための税制

「Investor’s Relocalization Act」

が2012年1月に施行されています。

資産家が多く滞在することで、地域の雇用が生まれ、経済の活発化が見込まれていましたが、大きく地域の経済を盛り上げには至っていません。

アメリカによる救済と投資信託への影響

財政再建と経済再生のため、約720億ドルの債務について、2015年6月29日にプエルトリコ知事が数年間の返済繰り延べを要請したため、一部のプエルトリコ債価格は、急落し、過去最安値を付けました。

プエルトリコは、ニューヨーク連邦銀行が管轄しているので、

アメリカ本国から救済されるのでは?

と考えられますが、アメリカの財務長官は、救済はしないと宣言しています。

主権国家ではないので、IMFによる介入がありませんし、現状では、アメリカ連邦破産法を適用することができないので、債務を圧縮・再編する目処が、全く立っていないことになります。

2015年10月に入り、米財務省が管理する「スーパーボンド」を発行し、債務再編に役立てる計画があると関係者が明らかにしていますが、まだ交渉は、始まったばかりで、今後どのようになるかは未定となっています。

プエルトリコ債の投資信託への影響

プエルトリコが発行する債権の金利収入については、アメリカでは、税金(連邦・州・地方)が免除されているため、リーマン・ショック以降アメリカ債権市場の金利が低下する中、ファンドにとっては、利回りを向上させるために好都合で、比較的金利が高いプエルトリコ債をポートフォリオに組み込み場合が多く、アメリカ地方債ファンドの約7割が、プエルトリコ債を保有しているようです。

日本でプエルトリコ債が関連する金融商品としては、

毎月決算型投資信託の「GS債券戦略ファンド 愛称:ザ・ボンド」が挙げられます。

2015年7月1日に公開されてた資料では、プエルトリコ債は、ポートフォリオの2.3%になっており、2015年1月から7月の交付運用報告書によると、基準価格の主な下落要因の1つとされています。

プエルトリコが破綻となると、金融商品に影響が出る可能性が高く、金融市場に動乱を招く恐れがあります。

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