2015年10月21日、欧州連合(EU)欧州委員会は、スターバックスなどが、EU加盟国から適用されていた優遇課税について、違法な国家補助に該当するとの判断を示しました。
欧州委員会は、オランダに対して、優遇課税を適用していた企業に、追徴課税するように命令を出しています。
課税される金額は、合計で、2,000万から3,000万ユーロ(26億5千万円から40億円相当)になるとのこと。
競争政策担当のベステアー委員は、
「大企業であろうと多国籍企業であろうと、すべての企業は公正に税を負担すべきだ。」
と話しています。
オランダ、イギリス、スイスを活用した手法
スターバックスは、
「スイス・トレーティング・カンパニー」
という手法を活用していました。スイスの法人を活用し、国外の会社が製造した商品を国外市場で国外の顧客に販売する場合は、法人所在地の州での優遇税制を申請することが可能で、所得税と資本税の低減が期待できるものです。
州により異なりますが、10%から20%の間となり、実効税率は10から12%とのこと。
スターバックスが利用していた取引の形態は、
アメリカ:本社
オランダ:欧州本社、子会社
イギリス:輸入販売会社
スイス :輸入販売会社
知的財産・商標権:(移転)
=アメリカ→オランダ地域統括会社
事業資金:(貸付)
=アメリカ→イギリスへ
コーヒー豆:
=生産地→スイス→オランダ(子会社)→イギリス
お金:
コーヒー豆代
=イギリス→オランダ(子会社)→スイス→生産地
ライセンス料(売上の6%)
=イギリス→オランダ→アメリカ
支払い利息(ロンドン銀行間貸出金利+4%)
=イギリス→アメリカ
コーヒー豆は、アメリカ本社やオランダの欧州本社を通過することなく、生産地から輸入販売会社を経由して、消費者へ届けられます。
その一方で、イギリスの輸入販売会社が支払うライセンス料は、オランダの欧州本社へ送金されます。
オランダでは、ライセンス料などの使用料に関する収入に優遇税制があります。
また、イギリスの輸入販売会社の買い付け資金は、アメリカのグループ企業からローンで調達し、利息(ロンドン銀行間貸出金利+4%)は、アメリカ本社への支払いとなっていました。
スイス・オランダの税制をフル活用する形で、
アメリカ:利益少し
オランダ:利益少し
イギリス:損失あり
スイス :利益たくさん
という状況を作り出すことに成功していました。
スターバックスだけではなく、アイルランドを活用しているアップル、ルクセンブルクを活用しているフィアット・クライスラーなども、EUの追徴課税命令の対象となっており、EU圏の各国の優遇税制を活用した節税スキームは、大きな転換点を迎えることになりました。