世界基準での納税者番号の把握制度

サラリーマンのキャッシュフローと資産分散

世界的にお金の流れを把握して、マネー・ロンダリングや脱税租税回避に対処するための基準である共通報告基準=CRS(Common Reporting Standard)日本では平成29年1月1日から、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度が導入された。

基準に基づき、各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供する。

金融口座情報とは・・・

・口座保有者の氏名
・住所
・納税者番号
・口座残高
・利子、配当などの年間受取金額

など。報告された情報は、各国の税務当局の間で自動的に交換されることになる。

平成27年度税制改正により、平成29年1月1日以後、新たに金融機関等に口座開設等を行う者等は、金融機関等へ居住地国名等を記載した届出書の提出が必要となる。

国内に所在する金融機関等は、平成30年以後、毎年4月30日までに、特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、報告された金融口座情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されることとなる。

例えば、日本に住んでいる日本人が香港に銀行口座を開設すると、香港の銀行は、提出された情報に基き、

・口座保有者の氏名
・住所
・納税者番号
・口座残高
・利子、配当などの年間受取金額

などを、日本の税務当局に報告する。日本の税務当局は、システム上に上記情報を掲載し、CRS加盟国は、システム上の情報を自動的に取得できる。

CRSの参加を表明している国・地域は、100を超えていて、東南アジア各国は・・日本、韓国、中国、香港、マカオマレーシア、シンガポール、インドネシアになる。

タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジアなどの国は、名前が見当たらない。

ちなみに、アメリカは、FATCAがあるため、CRSへは参加表明をしていない。

FATCAは・・・
(Foreign Account Tax Compliance Act)

「米国納税義務者による米国外の金融口座等を利用した租税回避を防ぐ目的で、米国外の金融機関に対し、顧客が米国納税義務者であるかを確認することなどを求める法律」

2010年にアメリカで制定され、アメリカ国外で、1万ドル(約110万円)以上預金している

・アメリカ市民
・グリーンカード保持者(永住権者)

は全ての情報をアメリカ内国歳入庁(IRS)に申告しなければならないというもの。

各国金融機関にも、口座開設など申込者が、対象者であるかの確認および、対象者であった場合、IRSへの報告義務が発生する。

香港で購入している保険商品でのTIN確認

2016年12月27日付けで、香港で購入している保険商品の会社から、個人情報更新の依頼が届いた。

案内メールには、「特に、税金を納めている国と税番号については正確にお答えください。」との一文が添えられていた。

CRSに該当する箇所の質問項目は・・・

Are you resident for tax purposes anywhere other than the Hong Kong?

If you answer yes to this question, please tell us where and also provide the relevant Tax Identification Number(TIN).

It would be optional for non-U.S persons to provide the TIN.

・Country
・Tax Identification Number(TIN)

といった文面になっている。書類の返送期限は、保険会社からの通知を受け取った日から、14日以内。日本居住者の場合は、納税者番号(TIN)として提出するのが、マイナンバーになる。

非居住者の場合は、居住国で取得している納税者番号を通知することになる。

銀行から提出依頼がない状態で、先に保険会社から提出依頼が来た形だ。

制度は常に変化する

香港の金融機関であるHSBC香港の口座開設について、現在は、香港以外の居住者が口座開設する際、

・氏名
・生年月日
・連絡先
・住所を証明する書類
・パスポート

など、これまでの口座開設時に必要だった情報に付け加えて、

・納税者番号

の取得が始まっているとのこと。その影響もあってか、口座開設に訪れる香港非居住者の数は減っているという。

HSBC香港の口座開設は、以前は・・・・パスポート・日本の運転免許証たった2つを持参するだけで、ほとんど何も聞かれることなく開設できた。

しかし、徐々に厳しくなり、

・パスポート
・国際運転免許証もしくは英文銀行残高証明書
・英語、中国語でのコミュニケーション能力

が求められるようになり、今回、納税者番号の提出が必要な流れとなっている。

制度は、常に変わるものなので、昔の情報をベースに行動しようとしても、その道は閉ざされてしまっている場合があるので、専門家に、最新状況を確認しておく必要がある。

制度の変更は、香港だけのお話しではなく・・・

中国本土の中国銀行では、以前は、非居住者でも支店窓口を訪問すれば、口座開設が可能だったものが、現在、非居住者は、口座開設ができない状態になっていて、シンガポールでも、非居住者の口座開設が厳しくなっているという。

すでに、口座を持っている非居住者については、口座が強制的に閉鎖になることはないようで、いわば、プラチナ口座になっている。

将来的に海外の口座を活用する可能性が少しでもあると考えるのであれば、開設基準が厳しいかどうかにかかわらず、可能な内に開設しておくのが、最善の手段になる。

一度厳しくなった制度基準は、そうそう元の状態には戻らないのだから。

CRSによって、銀行側の非居住者管理の手間が増えるのは確実で、今後、各国の銀行で開設基準が、厳しくなる流れが予想できる。

ただ、これから口座を開設するメンバーにとっては、ある意味有利でもある。CRSによって、口座情報が共有されることが、あらかじめ分かっているので、銀行口座内でのお金の動きを、きちんと計上して、申告すれば、何も問題はない。

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