暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所の顧客の情報確認=KYC(Know Your Customer)は、日本国内と海外で手続きが異なります。
また、今後はKYCが強化され、提出が必要になる情報・書類が増える可能性があるので、その点についてお伝えしていきます。
仮想通貨取引所のKYC
日本の取引所は、金融庁の審査をパスした後、顧客の情報確認として、
・身分証明書(運転免許証、住民票など)
・登録住所での本人確認郵便物の受け取り
が必要となっていました。
一方で、日本国外の暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所の場合は、
・身分証明書
・身分証明書+セルフィー+日付
・身分証明書+住所証明書
などのケースがあり、法定通貨の取り扱い有無で、厳しさが異なっているようです。
FXやバイナリーでの出金拒否
FXやバイナリーオプションの取引所では、取引利益の出金が拒否されるというケースがあります。
出金額の基準として、よく言われているのが、200万円と1,000万円のようです。
多くの取引所では、注文を飲んでいて、実際に取引をしていないので、投資家と取引所の相対取引となっており、投資家が勝つ=取引所が負けることになります。(※大きな為替変動時などを除く)
そのため、出金拒否をするのです。
日本国外の法人が運営している取引所だと、運営元のさじ加減1つで、どのようにでもコントロールできて、投資家は泣き寝入りするしかないというのが実情です。
暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所は、現在淘汰が進んでおり、中小の法定通貨の入出金を取り扱わない暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所の閉鎖が相次いでいます。
・セキュリティの保持に時間、手間、お金がかかる
・取引量が激減して、手数料が稼げない
というのが主な原因のようです。
取引量が多い大手の暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所では、出金拒否というお話はまだ大きくニュースになったことはありません。
身分証明書有効期限切れで再提出
暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所に提出した身分証明書の有効期限には、注意が必要です。
日本の銀行や証券会社の口座を開く際に、身分証明書(運転免許証、住民票など)を求められます。
運転免許証を身分証明書として利用していても、免許証の有効期限が切れて、切替え後に、再度提出を求められるケースは少ないです。
一方で、暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所で、法定通貨の入出金を取り扱っている場合は、有効期限のチェックが厳しく実施されているようです。
日本国外の暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所では、身分証明書としてパスポートを使用するケースが多いです。
提出していたパスポートの有効期限が切れたのですが、身分証明書の認証画面では、「Verified」となっていて、追加でアップロードする機能がなく、サポートに連絡するのものな・・・と思っていたところ、2つの暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所から新しいパスポート情報を提出するように連絡がありました。
1つ目:
7月23日に期限切れ連絡 → 8月13日に承認
2つ目:
11月5日に期限切れ連絡 → 11月6日に連絡済み
1つ目の取引所は、ほぼ利用していないので、パスポートデータを送付することで、情報がアップデートされました。
2つ目の取引所は、メインで法定通貨の入出金に利用しています。そのため、パスポートデータの提出だけではなく、これまでの預入れ暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)がどこから来たものなのか?
・他の取引所への法定通貨の入金履歴
・他の取引所での取引履歴
・他の取引所で本人の名前、メールアドレス等が確認できるアカウントスキャン画像
等の提出が求められました。
口座が凍結されたり、出金が拒否されていないので、問題はありませんが、運営元の拠点で、査証(ビザ)を保有して滞在している場合以外は、出金に関して問題があった場合、泣き寝入りになる可能性が高いです。
リスク回避のために、複数の取引所を利用して、資産を分散しておく必要があります。
KYCがより厳しくなるであろう理由
なお、今後は、暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)の顧客の情報確認=KYC(Know Your Customer)は、より厳しくなる可能性があります。
理由としては、FATFのVASPへのルール設定です。
FATFは、金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)
VASPは、仮想通貨関連事業者(VASP:Virtual Asset Service Provider)
FATFの暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)ガイダンス
2019年6月21日に、FATFが暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)のガイダンスを発表しました。
VASP=取引所などで、暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)のやり取りに、銀行での送金業務並の情報を求めるというものです。
送り主と受取人の個人情報を記録することが、トラベルルールと呼ばれていて、2020年6月までに対応が求められています。
大手取引所バイナンス(Binance)CEOのCZは、
「ビットコイン(BTC)は、KYCなしに、ブロックチェーンで、数十億ドルが転送できる。KYCを強化すると、ユーザーは、分散型取引所(DEX)へ移動するだろう。FATFは、規制による二次的な影響を考えていないのではないか。」
と「Forkast.news」のインタビューで述べています。
分散型取引所(DEX)は、法定通貨の取り扱いが無いケースが多いですが、KYCは実施されるケースがあります。
法定通貨にするためには取引所が限られる
また、暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)を法定通貨にして、銀行口座に出金するには、
法定通貨取扱取引所 → 分散型取引所(DEX) → 法定通貨取扱取引所
となるので、出口部分では、どちらにしろ法定通貨を取り扱っている暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)取引所を利用する必要があります。
暗号資産(仮想通貨/暗号通貨)だけで、全ての取引ができる世界になると話は別ですが、各国の規制状況からすると、数年の内に実現するのは難しそうです。
FATFのVASPへのルール設定で、
・取引所間
・個人ウォレットと取引所間
移動がこれまでのように自由にできなくなることで、匿名性を求める投資家たちは、対応を迫られることになります。
アカウントが凍結されて出金できないといった事態を防ぐために、古くなった個人情報・求められる個人情報は早めに提出して、万が一凍結されても困らない資産のみを預け入れておくことが必要となります。