イタリアのブランド「ドルチェ&ガッバーナ」に脱税問題は、2014年10月24日にイタリア最高裁判所で、逆転無罪の判決がでました。
ルクセンブルク法人にブランドの権利を売却しながら、真のオーナーとして、ブランド使用料などを実質的に受け取っていたのかが争点となっていました。
この脱税問題の背景には、「Falciani list」というのもが見え隠しています。
Falcianiというのは、
スイス・ジュネーブのHSBCで勤務していた男性の名前。
チューリヒ、ジュネーブ、ルガノのHSBC銀行内の
未払い税金に関する130,000の顧客データをコピーして、
外部に持ち出して、公開したリストのこと。
「Falciani list」が関係している可能性があるものとして、サッカーのメッシ選手の脱税問題があります。
メッシ選手の肖像権収入脱税問題
スペインの税務当局から、2006年から2009年の間に、肖像権の収入に関連した約410万ユーロを脱税した疑いが持たれています。
告発されたメッシ選手は、修正申告し、問題解決のために約500万ユーロ(約6億6000万円)を税務署に支払ったとされていますが、2014年10月に、本人は関与していない旨弁護士を通じて、裁判所に異議申立てをしています。
税務当局が目をつけているのが、主にメッシ選手の海外からの収入です。
スペインに本拠地を置く、サッカーチームのバロセロナに所属しているので、チームからのお給料の他に、スポンサー契約などをしている国内外の様々な企業からの収入がありますが、その入金経路などが問題となっています。
メッシ選手の肖像権収入に関係する入金経路と関連法人をみると、
2006年以前
- ・イギリス法人:Sport Enterprises Ltd
(ジブラルタル籍のサポート会社イギリス支店経由で設立)
→ウルグアイ法人Goodshire SAが、株の半分保有
*ウルグアイ法人は、
一般法人の所有者や取締役情報を作成せず、
また法人所有者の情報登録など必要がありません。
・スイス法人のLazario GmbH
他のスイス法人が所有者で、代表者がノミニー(名義貸し)
2006年以降
- ・イギリス法人 Sidefloor Ltd
登記簿上オーナー:Mr Ayomide Otubanjo
秘書サービス :Jordan Cosec Ltd
↑
実質のオーナー:Bedford Nominees (UK) Ltd
↑Jordans Trust Company Ltdが所有
↑West of England Trust Ltdが所有
・ウルグアイ法人 Jenbril SA
・スイス法人 Tubal Soccer Management GmbH
となっており、関連する会社が、ノミニーサービスの提供会社であったり、ノミニーを利用してたり、真の会社所有者を簡単に特定できない仕組みになっています。
(*Global Witnessのサイトを参照)
元代理人とされている人が、このスキームを提案していたようですが、メッシ選手の父親が資金管理をしており、認知・容認していたと疑う余地があるとのこと。他のスポート選手の資金管理についても、今後波及していく可能性があります。
裁判の結果としては、無罪が確定しています。
真の所有者を明らかにするための法律
イギリスで提案されている新しい会社法は、法人の4分の1以上の権利を保有している法人・個人は明らかにすべきというものです。現状では、ノミニーや他の法人を隠れ蓑として使い、真の所有者を特定することが難しいのですが、
この法律が成立すると、法人の権利を主張できる人は、明らかな状態となります。他の国家も追随することが予想され、オフショア法人の統廃合が進む一方で、秘匿性の高いオフショア法人を活用するスキームが重要視される流れとなりそうです。
チームメイトも脱税容疑で告発
2015年9月、スペインのサッカーチームバルセロナのマスチェラーノ選手が、肖像権に関わる収入の脱税容疑で告発されました。
バロセロナとナイキで契約している肖像権からの収入は、マスチェラーノ選手が関係する
アメリカ・マイアミの法人
ポルトガル・マデイラ島の法人
へ入る形となっており、申告漏れがあったようです。
申告漏れの金額は、
2011年:約58万7,822ユーロ
2012年:約96万8,907ユーロ
合計:155万6,729ユーロ
に上っていました。
本人は、脱税の罪を認めて、
・申告漏れ金額+利息の支払い
・罰金816,000ユーロを支払い
・12ヶ月(4ヶ月+8ヶ月)の実刑判決
ということで処分が確定しました。
実際に、刑務所に収監されることはないようです。
なぜ、脱税疑惑で調査が入っているのか?
2014年にOECDの51カ国で締結された金融口座に関する自動的情報交換(Automatic Exchange of Information for Financial Accounts)
CXC Globalという会社がの調査で、脱税について厳しく調査・対応しているOECDの国が明らかになりました。
その国は、
・スペイン
・ドイツ
・ブラジル
・ロシア
・アルゼンチン
でした。
メッシ選手やマスチェラーノ選手について、調査が入っているのは、スペインがOECDの中でも、厳しい体制を取っているからです。
サッカー選手に対してだけではなく、パルマの公爵夫人、クリスティーナ王女は、税疑惑でタイトルを剥奪されています。
ドイツも同様に、サッカークラブ、バイエルンの元会長であるウリ・ヘーネス氏の脱税事件で、禁固3年6カ月の実刑判決を下したり、富裕層の税逃れで捜査進めているスイスのクーツ事件など、厳しい体制で脱税問題に取り組んでいます。
ブラジルも、サッカー選手のネイマール氏が、2011年から2013年で、1,600万ドルの脱税したと見て、捜査を続けています。
ロシアは、原油価格の下落にともなって、国の運営が厳しくなっていうこともあり、オフショア地域での資産への課税逃れ防止のために、「脱・オフショア」開示ポリシーを新しく掲げています。
世界的な協力体制の元、各国が独自の政策の基づいて、資産調査に乗り出しています。資産管理は、専門家のもと、正しい手順で行う重要性が、今後どんどんと増していきそうです。