HSBCの脱税幇助リスト

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国際調査報道ジャーナリスト連合ICIJ(International Consortium of Investigative Journalists)により、HSBCスイス部門が、富裕層顧客の巨額の脱税をほう助していたという機密文書が公開されました。

ICIJは、フランスの新聞ルモンド(Le Monde)経由で入手情報のようですが、1,190億ドル、200カ国の顧客、10万人以上が掲載されています。

Falciani list

Falcianiというのは、人の名前で、ジュネーブのHSBCで勤務していた男性で、チューリヒ、ジュネーブ、ルガノのHSBC銀行内の未払い税金に関する130,000の顧客データをコピーして、外部に持ち出して、公開してしまいました。

この顧客データは、まだ全て解析されていませんが、個人や企業の秘密口座情報、中には、映画監督のものや有名ファッションブランドのものが含まれており、資産総額が69億ドルにのぼるともいわれています。すでに明らかになっている数字で、フランス、ギリシャ、スペインでは、「Falciani list」をもとに、6.1億米ドルの回収に成功しています。

機密文書で明らかになった各国の口座総額

スイス   :3,120億ドル
イギリス  :217億ドル
ベネズエラ :148億ドル
アメリカ  :134億ドル
フランス  :125億ドル
イスラエル :100億ドル
イタリア  :75億ドル
バハマ   :70億ドル
ブラジル  :70億ドル
ベルギー  :63億ドル
サウジアラビア:58億ドル
レバノン  :48億ドル
オランダ  :46億ドル
ドイツ   :44億ドル
ケイマン諸島:43億ドル

ヨルダン、オマーン、モロッコの国王、イギリスの歌手や女優、オーストラリアのスーパーモデルロシアの億万長者など、名前と金額が明らかになっています。日本人に関しては、296名が預金しており、預金総額は、4億2,000万ドルになっているとのこと。

今までは、一般に広く、「Falciani list」に掲載されている名前はが出たことはありませんでした。

ただ、今回のリストに名前が掲載されていても、即、脱税行為をしていたということではなく、脱税行為をしていた可能性があるということになります。また、今回明らかになった口座の特徴は、開設時期が1997から2000年集中しているという点が挙げられます。この文書を元に、各国がどのような動きを見せるのか注目することになります。

アメリカのFATCA規定

FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)

2010年からアメリカで制定された、国外で1万ドル(100万円)以上預金している

・アメリカ市民
・グリーンカード保持者(永住権者)

は全て、それをアメリカ内国歳入庁(IRS)に申告しなければならないというものです。

各国金融機関にも、口座開設など申込者が、対象者であるかの確認および、対象者であった場合、IRSへの報告義務が発生します。

FATCAが制定されたキッカケは、2009年のスイスUBS銀行が、アメリカ人顧客の脱税を幇助していたことを認め、罰金7億8,000万米ドルを支払い、285人の顧客名簿を米司法当局に提出したことによります。

世界各国で、従来の金融システムへの規制が次々強化されている中、日本では、2018年から海外口座情報自動交換が始まりますので、海外口座を活用している場合には、正しい知識を持って、各種申告など対応が必要となります。

イギリスHSBCのプライベートバンク事業売却

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2014年6月、イギリスの大手銀行HSBCは、スイスのプライベートバンク資産125億ドル分をリヒテンシュタインのLGTグループへ売却すると発表しました。

プライベートバンクでの資産管理は、収益性が高い事業ですが、世界的に租税回避への取締りや、法制度の整備、厳しい適用方針などがあるので、収益よりもリスク軽減を優先した形となりました。

LGTは過去に脱税で追徴課税を受けている

LGTは、2011年に明らかになったオリンパスの粉飾決算にからんで、名前が登場したこともありました。

LGTは、Liechtenstein Global Trustの略1920年に創設された金融機関で、ヨーロッパだけではなく、中東やアジアでも展開しており、富裕層への金融サービス提供を主な業務としています。

2008年、LGTに脱税に関しての調査がドイツ公安当局から入っています。

発端は、元LGTの行員が、1,400名分の顧客リストを持ち出し、ドイツの情報機関に420万ユーロで売却したことでした。

ドイツ当局は、リストを元に捜査し、3,000万ユーロ以上の追徴課税を実施しました。

スペイン、イタリア、フランス、スウェーデンなど、OECD加盟の9カ国も調査に乗り出す大きなものとなりました。

ドイツでは、富裕層や有名人が、税逃れのため合計で40億ユーロの資金をリヒテンシュタインの秘密信託に預けていた可能性が浮上しています。

リヒテンシュタインという国

リヒテンシュタインは、スイスとオーストリアに囲まれた公国です。

元々は、男爵・伯爵領が公領として認可されたのが始まりで、国の面積は、160平方キロメートルと、日本では瀬戸内海にある小豆島とほぼ同じ広さです。

2013年時点、人口が、約3万6,920人、国民一人あたりのGDPが、152,933米ドルと世界で2位という統計結果があります。

GDPがとても高い理由としては、タックスヘイブンとして有名で、節税目的で多くの外国人が企業を設立して、そこから収入があるためです。

経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)

が発表しているタックスヘイブンで、情報公開などに非協力な国をリストアップしたブラックリストに2015年度も掲載されています。

各金融機関のリストが流出することで、タックスヘイブンの国・地域や金融機関は、厳しい局面を迎えることになります。

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