時価主義と飛ばし

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2001年3月から会計制度で、金融商品については、「時価主義」が原則適用となっています。

資産・負債を評価する際に、その時点での市場価格で、財務諸表に反映させるものです。

それ以前については、「取得原価主義」が採用されており、取得時の価格が財務諸表に反映されるため、価格の上下が明確化されないものとなっていました。

「時価主義」が導入されるにあたり焦ったのが、バブル崩壊で大きな含み損を抱えていた企業です。

保有している金融商品の含み損が、財務諸表に反映されるのを防ぐために、決算期の異なる企業やファンドに、一時的に、また後日の引取を条件に、簿価もしくは時価よりも高額で買い取ってもらっていました。

「飛ばし」と呼ばれるスキームです。

▼ケイマン諸島のファンドへ

「飛ばし」が大きく注目されたのが、オリンパスが利用した海外ファンドのものでした。

オリンパスは、含み損を抱えた金融資産を引き受けてもらうファンドとして、

ケイマン諸島に
・Quick Progress Co. Ltd
・Central Forest Corp
を組成しました。

そして、同じくケイマン諸島の事業投資ファンドG.C. New Vision Ventures L.P.(GCNVV)を通じて、Quick Progress Co. Ltdへ少なくとも240億円程度の資金提供し、資金を複数回、相互に移動させるなどの方法で、含み損を表面化させないようアレンジしていました。

投資事業ファンドの
G.C. New Vision Ventures L.P.(GCNVV)は、

ジェネラルパートナー(無限責任)
 GCICayman Ltd:出資金1億円

リミテッドパートナー(出資額までの有限責任)
 オリンパス:出資金300億円
 Genesis Venture Capital Series Ltd:出資金50億円

2002年に上記3社で組成されました。

事業投資ファンドの期間は10年とされていましたが、2007年に途中で解散、全額償還され、GCICayman Ltdへは、運用、成果報酬、中途解約金合わせて、約24億9千万円という多額の資金が流れていました。

▼「飛ばし」の資金で損失穴埋め

発覚した事件の詳細は多岐に渡りますので、概要のみ記載しますが、大きく分けて2つ、

1)2005年からの734億円での日本国内3企業の買収
2)2008年の22億ドルでのイギリス医療機器会社の買収

1つ目は、事業投資ファンドGCNVVなどを用いて2005年から2008年までに国内企業3社を734億円で買収し、2009年3月決算で、557億円の減損処理をしていたもの。

2つ目は、イギリス医療機器会社ジャイラス社の買収が22億ドルで実施されましたが、オリンパスからAXAMインベストメント(ケイマン諸島にある投資助言会社)へ6億8,700万ドルの資金が移動していたものです。

企業買収のコンサル費用の相場は、買収金額の1%から5%であるのに対して、約32%の金額。

買収で不当に高く価格設定し、お金がかかったように見せて、損失穴埋めに流用したのが発覚したのですが、

2013年9月にイギリスのSFO (Serious Fraud Office)重大不正捜査局が、オリンパスとイギリス子会社のジャイラスグループを会社法違反の罪で、刑事訴追し、国をまたいだ捜査が継続されています。

複数国で展開する時にケイマン諸島の法人を利用するスキーム

オリンパス事件のように受け皿会社としてケイマン諸島の法人を利用するスキーム

とケイマン諸島の法人の活用方法は様々ですが、世界的な法人情報や銀行口座情報の開示・捕捉に伴い、ケイマン諸島の法人を利用したスキームも見直しを迫られるケースも多くなってきます。

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